恋の糸がほどける前に
やがて人波に入ると、人を掻き分けていくのに必死だった。
「わあっ!」
慣れない砂浜のさらさらした足元に、ふいに足を取られる。
こ、転ぶ……っ!
反射的にそう思って、両手を前に出して襲いかかるはずの衝撃を待った。
「……?」
しかし、私の身体を襲ったのは、トン、という軽い衝撃。
来るはずのもっと大きな衝撃に備えて瞑っていた目を開け顔を上げると、そこにいたのは間違いなく水原だった。
偶然にも、買った食べものたちを持って歩いていた彼に、私は正面からダイブしてしまったようだ。
思い切り抱きつくような格好になっている。
……驚いたように見開かれた、水原の瞳。
それはキラキラと眩い太陽の光を受けて、吸い込まれそうなくらい綺麗だと思った。
「なんだ、三浦か!びっくりしたー。……何ひとりでこけそうになってんの?」
見開いていた目を笑みに細めて、あははと笑いながら水原はそう言う。