恋の糸がほどける前に
「……葉純と一緒に勉強してた人、なんて私、一人しか知らないよ?」
「え」
「やだ、葉純から言ったんじゃんっ。昨日は混みすぎてて相席だった、って。……そのあと私が葉純に訊いたこと、忘れたの?」
「……」
そういえば。
次の日、芽美にそんなこと、言ったかもしれない。
……うん。
そうだ、それで。
確かに訊かれた。
「誰と相席だったの?って」
「……そうだったね」
呆れたような驚いたような芽美の言葉に頷いた。
うん、すっかり忘れてたよ……!
え。
じゃあもしかして芽美、私の好きな人、分かってる!?
「……葉純の好きな人って」
「え!?ま、待って待って!」
まだ心の準備が!
とあたふたしている私にも、容赦なく澄んだまっすぐな瞳を向けてくる芽美。
「……水原くん?」
小さく首を傾げて、囁くように芽美が呼んだその名前に。
────ドクン、と心臓が大きく音をたてた。