恋の糸がほどける前に
水原がコクリと頷いたから、それはちょっと嫌だなぁ、と思って半分くらい、胸のあたりまで開けた。
瞬間、さっきまで隠れていた肌に海の気持ちいい風が当たって、なんだか気持ちいい。
「水原は戻るとこ?」
「え、ああ」
「そっか!じゃあ私貴弘のとこ行ってみる!今どこにいるか分かる?」
「焼きそば、買いに行ったけど」
「分かった!ありがとー!」
ニコッと笑顔を向けて、私は水原が教えてくれた通り、焼きそばを出している海の家に向かって駆けだした。
今度こそ、転ばないように気を付けながら。
「貴弘!」
人ごみのなか、ようやく探し出せた貴弘は、水原に言われた通り、焼きそばを買っている途中だった。
「おー、丁度いいとこに。コレ、持ってけ」
「え」
紙皿にのった焼きそばをふたつ渡された。