恋の糸がほどける前に
「残りできるまで、もうちょっとかかるんだってさ。だから先に持ってけ」
「あと4つ?」
「いや、色々買ったから、とりあえずあと2つ」
「分かった」
あと2つなら貴弘ひとりで運べるだろうと思い、私は受け取った焼きそばをみんなのもとに届けるべく、歩き出した。
あとはなんだろ、飲み物とか必要かな?
なんて考えながら歩いていたら、急にグンッと身体が横に傾いて。
「わあっ!?」
今日はやたら悲鳴を上げる日だなぁ、なんて考える暇もなく、力のままに身体が引かれた。
……誰かに、腕を引っ張られたからだ。
なんとか持っていたやきそばはひっくり返さずに済んで、ホッと安堵の息が零れる。
「……なにか用ですか?」
私の腕を掴んでいたのは、全く知らない男だった。
温かいうちにこのやきそばを皆のところに運びたいから、用があるならさっさと言ってほしいのに、男たちはなんだか気持ち悪い笑みを浮かべるだけ。