恋の糸がほどける前に
2人組のうち、ひとりが私の腕をつかんでいる。
なんだか、チャラそう。
耳たぶにたくさんついたピアスはまだいいとして、唇のピアスだけはどうしても直視できない。
痛そう。
ひとりはくすんだ金色の短髪で、切れ長の目を余計に鋭い印象にしている気がした。
もうひとりは、茶髪ロン毛。正直、似合ってない。
「……これ、落としたけど?」
ようやく口を開いた男は、そう言って私を掴むのとは逆の手を出してきた。
「……あ」
見ると、握られていたのは、割箸。
……あれ、そういえば紙皿に乗っていた箸が片方の焼きそばの方だけなくなっている。
「あ、どうも」
はじめからアブナイお兄さんたちだと思ってしまったことを反省しつつ、私は男が差し出してきた割箸を受け取った。
「……あの?」
受け取った、というより焼きそばの紙皿の上に乗せてもらっただけなんだけど、それで用事は済んだはずなのに、男は私の手をはなしてくれない。