恋の糸がほどける前に

「それだけ?……もっと感謝してもらわないとお兄さんたち引き下がれないなー」

「は?」

「もっとあるでしょ?ちゃんとしたお礼の方法」

「……」


何を言っているの?こいつらは。


やっぱり危ないお兄さんたちだったんだ、とさっき一瞬でも反省した自分が悔しくなった。

箸を拾ったくらいでこんなこと言うなんて、どれだけ恩着せがましいの、この人たち。



「……拾っていただいてありがとうございました。大変助かりました。はなしてください」


はぁ、とため息交じりに渋々そんな言葉を吐き出す。

だけど、それで相手は満足するはずもなく、向けられたのは不満気に眉を寄せた表情。


「なめてんじゃねーよ。そういうことじゃねぇってわかってんだろ?」

「はぁ?あんたたちの方こそ、バカにしてんの?私だってひとりで来てるわけじゃないんだからね。あんたたちに割く時間なんてこれっぽっちも持ち合わせてません」

「てめ……っ」


もし、焼きそばを持っていなかったら。

そんな考えが、頭をよぎった。

そしたらコイツが私に手を上げようと拳を振り上げるより先に、平手打ちをお見舞いしてやったのに。

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