恋の糸がほどける前に
「……っ」
叩かれる……!
そう思って、反射的に強く目を瞑った。
「……なにしてんの?」
「!?」
やってくるはずの痛みが訪れず、その代わりに聞き馴染んだ声が耳に届いた。
ハッと目をあけて顔を上げると、そこにいたのは、私に向かって振り下ろされるはずだった金髪の手を阻んでいる、水原だった。
「み、水原……」
「ちょっと、離して」
私の腕をつかんでいた男の手を、強引に引きはがす。
「……行くよ」
引きはがしたときに私の手を掴んだ水原は、そのまま引っ張るようにして歩き出した。
「ちょ、待てよ!おまえ、これで済むと思ってんのか!?」
「だから、拾ってくれたことには感謝してるってば!だけどホントに図々しいから!そんなんでナンパしたって誰も引っかからないよ!」
水原に手を引かれながら男たちに言い返して、私は持っているやきそばがこぼれないように必死で水原の歩調についていく。