恋の糸がほどける前に
……萩野貴弘(はぎの たかひろ)。
私より2歳上で同じ高校の3年生、……で、いとこ。
私のお兄ちゃんと同い年で仲がいいから、結構な頻度で家に遊びに来るんだ。
小さい頃から我が家の常連だから、私にとってもいとこっていうより兄妹みたいな感覚。
ただ、高校に入ってからは今までどおり「貴弘」なんて呼び捨てにしたら色々と面倒なことになりそうだったから、「萩野先輩」なんて、なんとも他人行儀な呼び方をしている。
「なんだ、って。失礼なヤツ。普通に気配あるし。空気なおまえよりよっぽど存在感あるわ」
「は!?あんたの方がよっぽど失礼だから!!」
本当に、昔から失礼な発言ばっかり。
この口の悪さ、どうにかならないのかな、って思うけど、きっと治らないんだろうとほとんど諦めている。
「本当のことを言っただけじゃん」
さも当たり前のことのような口調のセリフに返す言葉もなく、今度は私がため息をつく番だった。