恋の糸がほどける前に
「よいしょ……」
ケータイをポケットに突っ込んで立ち上がる。
床に寝ていたお兄ちゃんを踏みつけないように避けて、外に出た。
みんなを起こさないように、ドアを静かに閉める。
「わああ……!」
見上げた空に瞬く星がきれいだった。
なんとなしに、歩き出す。
昼間はあんなに暑かったのに、今は肌を撫でる風も優しい涼しさを含んでいた。
海辺に出ると、静かな波の音が耳を打つ。
人がいないとこんなに静かなんだ、となんだか感動してしまった。
少しだけ欠けた、まんまるになれない月が黒い海に光を差していて、見惚れてしまうほどに綺麗。
ほう、と思わず感嘆のため息が零れた。
心が穏やかに癒されるような、不思議な気分。
こういう綺麗で静かな景色ならいつまででも見てられるなぁ、と思いながらただただ夜の海を見つめていた。
……そんな、静けさに包まれていたときだった。
ふいに意識が別の方向に向けられたのは。
「あれー?」
後ろから、面白がるような声が聞こえた。
反射的に振り返ると、コンビニの袋を手に持った、昼間のお兄さんたち。