恋の糸がほどける前に
暗くて表情まではっきりと見えるわけじゃなかったけれど、きっと昼間会ったときと同じようににやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべているのだろう。
「昼間会った子だよねー?」
「……」
関わらないのがいちばんいい。
そう思って、私は彼らの言葉は無視して、別荘に戻ろうと歩き出した。
「ええ?何、シカトかよ」
「待てよ」
ガシッ、と強く腕を掴まれて、足を止めるしかなかった。
「やめてよ。何なの?はなして!」
……昼間と同じような状況なのに。
周りに誰も人がいない、ただそれだけの違いだけで、昼間はほとんど感じなかった恐怖が心の中に生まれていた。
怖いと言葉にしなくとも、そんな感情は声の震えになって表れてしまうほどに。
「うわ、なに。もしかして俺らのこと怖がってる?かっわいーい」
「昼間はあんなに生意気だったのにな。そんな怖がらなくてもいじめたりしねぇって。なぁ?」
「そうそう。……こんな時間にひとりでいるなんて、どうせあの彼氏と喧嘩でもしたんだろ?俺らと飲もうぜ」
うすら笑いを浮かべるこいつらが、心底嫌だと思った。
ああ、もう。
こんな時間にひとりで歩くとか私のバカ。
よりによってこいつらにつかまっちゃうなんて。