恋の糸がほどける前に

「イヤ。はなして」

「だめだめ。ほらこっち来いよ」


必死に抵抗しようと身を捩るけど、どう頑張っても放してくれない。

なんだかもう、泣きたくなってきた。

掴まれた腕が痛い。


「やめてって言ってるでしょ……っ!行かないから!」

「そう言わないで」

「しつこいっ!!」

自分の耳にさえうるさく聞こえる甲高い声で拒絶を叫ぶと、さすがにイラついたのか茶髪の男がパンッと私の頬を叩いた。


「っ」


痛みよりもこんな奴に傷を負わされたショックに、言葉が出ない。

視界がぼやけるのは、瞳にたまった涙のせいだろうか。


「いい加減にしろよ。俺らだってそんなに気長くねぇの」


低い声で耳元で囁かれて、堪え切れずに涙がこぼれ落ちた。

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