恋の糸がほどける前に

なんで。

なんで、こんな奴に泣かされなくちゃいけないの。


こんなことで涙が出てくる自分の弱さを恨んだ。


……ねぇ。

助けてよ。


「……はら」


ぽつりと、考えるよりも先に言葉が零れた。


────呼んだら、どこにいたって助けに来てくれるんでしょ?



「ん?何?」

聞き取れなかったらしい男が、嘲るような笑いを浮かべて聞き返してくるけど、そんなことはもうどうでもよかった。



「……けて、水原……っ」


涙声で呟いた言葉は波音にさらわれてしまったから、きっと男たちの耳には届かなかった。


……だけど。


「だから……っ!こいつには触るなって言っただろ……っ!」


聞こえた声に。

どうしようもなく、心がドクンと大きく跳ねて。

ぶわっと涙が溢れた。


「み、水原……っ!」


どうして?

そう問うよりも、男の手を振り解いて自分の方に引き寄せてくれたその力強さに安心して、何も言えなかった。


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