恋の糸がほどける前に

「……なんだよ、またお前?いい加減ウザいんだけど」


「男は引っ込んでろよっ!」


「っ!!」


水原が、うっ、と息を詰まらせたのが分かった。

衝撃と痛みに歪ませた顔。


……水原の腹を強く殴った男たちに、私は頭が真っ白になる。


腕を掴んでいた水原の手が離れていく。

ゴッという鈍い音と共に水原が顔を背けたのは、頬を殴られたから。


1対2、なんて卑怯だ。


水原も殴られ突き飛ばされても立ち上がっては反撃しようとするけれど、いとも簡単にそれを阻まれてしまう。


「や、……やめ……っ!」


「あんたが言うこと聞かないからこういうことになってんだろ?」


嘲笑うように言った男に強い怒りがわいてくるけれど、それ以上に感じた恐怖に身体が硬直してしまった。


水原の口元に流れる赤い血が見えたからだ。

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