恋の糸がほどける前に

バカ。

いったいどれだけ私を泣かせれば気が済むの?


「……バカ。水原の、アホ。この、おひとよし……っ!!」


「ごめんって」


堪え切れずに、持っていた手当ての道具をベッドの上に投げ出して両手で顔を覆った。

よしよし、と頭を撫でてくれる手が不器用に力の加減を探っていることに、また心が震える。


「泣きやめって。……三浦が泣くの、なんか……困るから」


「……困るの……?」


顔を覆っていた手をゆっくり膝の上に置いて、少しだけ視線を上げ、水原の顔を見た。


ぱちっと目が合う。


「……ん。困るよ」


さっきまで頭を撫でていた掌が、ゆっくりと私の髪を下って頬を撫でた。


親指が涙のあとをなぞる。


火照った頬に私より低い体温の指が触れて、その冷たさが心地良かった。

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