恋の糸がほどける前に
だけど、今は。
重なる体温。
感じる呼吸の動き。
鼻腔をかすめる、海と血の匂い。
そのひとつひとつに心臓が共鳴するみたいに大きく鳴る。
曖昧で子どもの恋が、確かな痛みを伴って、引き返せないほど強い想いに変わっていた。
「……水原」
もう、本当に引き返せないよ。
君の全部が欲しい。
ねぇ。
どうしたらいいの?
心に渦巻く強い想いは、出口を求めて暴れるばかり。
好きと告げる勇気がないせいで、一方通行の想いばかりが重なり、募って、行き場をなくして痛みに変わる。
どうしたらいい?
なんて。
どうしようもないのは分かっているから、せめてもと抱きしめる腕に力を込めた。