恋の糸がほどける前に


付き合うのも別れるのも、それは私が口出しをすることではなく、ふたりの問題だ。


だけどあの様子だと、雫先輩は別れることに納得できていないように思えた。


私が貴弘に怒っても仕方ないとは思うけれど、雫先輩は私にとって大事な先輩。


そんな人を傷つけられたら、無関係だと分かっていながら怒りたくもなる。



「怖い顔してんなー」


「うるさいなぁ、考え事してるんだから仕方な……、えっ!?」



ふと、後ろから笑いをこらえたような声が聞こえて、そしてそれがよく知る声。

驚いた私は、思わず勢いよく顔を上げていた。


「うお、びっくりした」


きっとすごい形相で顔を上げたからだろう、目の前に立つ今まさに怒りを噛みしめていた相手────、貴弘が、本気で驚いたような顔をした。


「貴弘、なんでいるの!?」


「は?……生徒会の仕事がまだ残ってたから、片付けてきたんだよ。つか、何怒ってんだよ。顔、すげーことになってるけど」


「うるっさい!!」

< 96 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop