恋の糸がほどける前に
付き合うのも別れるのも、それは私が口出しをすることではなく、ふたりの問題だ。
だけどあの様子だと、雫先輩は別れることに納得できていないように思えた。
私が貴弘に怒っても仕方ないとは思うけれど、雫先輩は私にとって大事な先輩。
そんな人を傷つけられたら、無関係だと分かっていながら怒りたくもなる。
「怖い顔してんなー」
「うるさいなぁ、考え事してるんだから仕方な……、えっ!?」
ふと、後ろから笑いをこらえたような声が聞こえて、そしてそれがよく知る声。
驚いた私は、思わず勢いよく顔を上げていた。
「うお、びっくりした」
きっとすごい形相で顔を上げたからだろう、目の前に立つ今まさに怒りを噛みしめていた相手────、貴弘が、本気で驚いたような顔をした。
「貴弘、なんでいるの!?」
「は?……生徒会の仕事がまだ残ってたから、片付けてきたんだよ。つか、何怒ってんだよ。顔、すげーことになってるけど」
「うるっさい!!」