恋の糸がほどける前に
ああ、もう。
口出しするべきことじゃないのは分かっている。
でも、雫先輩のひどい沈みようとは正反対の貴弘のあっけらかんとした様子に、私は言葉にせずにはいられなかった。
「あんたねぇ、自分がどれだけ傷付けたかわかってないの!?どうしてそんなに普通なの!?本当、信じられない!!」
思わず叫ぶと、貴弘はすっと真面目な顔になった。
いつもふざけているから、その変化に今度は私の方が少し驚いてしまった。
「……雫に聞いたのか」
「そうだよ。雫先輩をフるなんて信じられない。……もし好きじゃなくなったんだとしても、ちゃんと雫先輩が受け入れられるように気遣ってあげてよ!」
「……ちょっと、こっち」
そう言って私を連れて空き教室に入った貴弘が、はぁ、とため息をついた。
もう、ホント信じられない。
呆れてるのは私の方だっていうのに!