天使の涙



まだ夜中の二時。


眠れない。眠りたくない。またあの夢を見てしまうかも知れないから。


―カタン…


紙袋をパジャマのポケットにしまい、部屋から出て階段をソッと静かに降りる。
流石にこんな夜中には誰も起きていないだろうと思っていたのだが、リビングから僅かに明かりが漏れていた。


畑山先生?


―キィ…


しかし部屋の中に人の気配は無く、テーブルの上には汗をかいた牛乳パックがそのまま置かれていた。


誰かが出しっ放しにしてしまったのだろう。冷蔵庫にしまおうと持ち上げてみるが、中身は空っぽだった。


「………」


電気を消して、玄関先で靴を履き替え外に出る。


空には、満天の星。連続して聞こえて来る虫たちの声。


「?!……うっ、っは…ぁ…」


まただ…。また、過呼吸が始まった。今度はさっきよりも酷い。


ポケットの中の紙袋を取り出そうとするも、手が痺れて自由に動かない。視界が振れて、足がフラフラと交差する。


「はっ……、はっ、はっ……」


駄目。
落ちる――…


「おい!!!しっかりしろ!!!」


倒れる寸前、聞き覚えのある男の子の声が耳に響き、私の意識はそこでプツリと途絶えた。


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