始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
嘘でしょ
どうしよう・・・こんなつもりじゃなかったのに。
温かいベッドの中、さっき目を覚ましてこの状況に気がつき、必死にうつむいて瞳をギュッと閉じている。
どうしたらいいか迷い、そっと気づかれないように顔を上げて前を見る。今私にできるのはこれだけ。
目の前にいるこの人にしっかりと抱きしめられて寝てしまったからだ。
今も抱きしめられたままでいるから、私の顔は彼の胸元にある。彼の顔は・・私の頭の上にある。そして、この肌に触れる感触は・・・お互い裸だ。
迷いながらもう少し顔を上げてみる。目の前でまだ眠っている顔を覗き見た。

  -うん・・・綺麗だ。カッコイイって言葉を通り越して綺麗だー

サラサラの前髪が閉じている瞳にかかっていて、完全に色気を放っている。まさかこんな顔を見るなんて。
いつも会社にいる時は、整髪料でビジネススタイルを装っていたからもっと大人びて見えていた。
今、目の前にいる彼はもっと若く見えて私の知らない彼だ。
そう・・・彼としてしまったんだ、澤田 隼人と。
どうしてこうなったんだっけ?もう1度うつむいて目を閉じて思い出してみる。

昨日は楓のとこへ山中くんが向かってきっといい方向にいったはずだけど、楓を想っていた澤田くんのことも気になり、ちょっと面白半分に気持ちを問い詰めて。慰めるつもりで飲みに行ったのに・・・酔いに任せて澤田くんの家まで来て、最後までしちゃうなんて。こんなつもりじゃなかったのに・・

  -私は本当にバカだー

声を出さないようにしていたのに、ついため息をついてしまった。
やばいっと思った瞬間に、頭上で声が聞こえた。

「おはよう、咲季さん」

「え!?」

寝ていたはずの澤田くんが抱きしめたまま挨拶してきた。それも昨日までの敬語でなく、私の苗字ではなく名前まで呼んで。
あまりに驚いて思いっきり顔を上げてしまった。彼は優しく微笑んでいる、いや・・あの極上の笑顔で。

「どうしたの?さっきから慌てふためいて」

「何で・・」

どうして私が慌てながら考えていた事知っているの??さっきからって、え・・もしかして・・・

「うん。先に目が覚めたけど、咲季さんが起きたからちょっと寝たふり。目を閉じていても咲季さんの慌てぶりは伝わってきていたよ」

!!!私の考えている事までばれている。
私がこんなに焦っているのに、澤田くんは楽しんでいるかのように笑っている!信じられない!

「最低!もう離してよ!」

澤田くんの腕を振りほどこうと思ってもビクともしない。

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