始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
朝礼での部長の話も終わり、それぞれが自分の仕事を始める。
私も今日の予定を確認し、準備も終わったのでバッグを手にしてフロアを出た。廊下を歩きエレベーターへと向かうと、エレベーター前で散らばった資料やら封筒を拾っている男女が視界に入った。
あの男の後姿は・・澤田くん、またか・・・。彼のいる所にタイミングよく居合わせてしまう自分が嫌になってしまう。そんな私の耳に女の子の声が聞こえてきた。

「すいません。あの・・大丈夫です」

可愛い焦った声で一生懸命それらを集めている小柄な彼女に、澤田くんは「大丈夫だよ」と言いながら次々と拾っている。

「すいません・・」

恥ずかしそうに真っ赤な顔で澤田くんに謝り、また書類と封筒を次々と拾う。
しかし、ずいぶんとすごい量の書類だ。そばまでたどり着いた私も知らん顔はできず、かがんで一緒にそれらを集めて拾った。

「あっ、すいません・・ありがとうございます」

突然混ざって拾い始めた私に彼女は恐縮した顔をみせた。
私は自分の周りに散らばった書類と封筒を拾い、とりあえずまとめてその子に手渡した。

「大丈夫?すごい量だね」

「はい!大丈夫です、ありがとうございました」

可愛い笑顔を見せて自分の拾った束の上に重ねて私から受け取った。
それにしても重そうだ・・
その上澤田くんからも受け取ろうとしている。全部持てるの?重くてまた撒き散らしてしまうのじゃないかな?澤田くんが拾っている量だってかなりある。紙だって量があれば結構と言うか、かなり重い。

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