始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
「何階?一緒に運ぶよ」

そう言って彼女の持っている分の半分以上を取って自分の持っている上に乗せた。
その言葉を聞いて彼女はまた顔を赤く染めた。

「いえいえ!大丈夫です!運べますから」

焦った顔を見せて首を振る。

「何階?」

何でもないことのように、サラッと聞き返す。そんな彼の対応に彼女も小さい声で「2階です・・」と答えてうつむいた。あ~、可愛いなぁ・・。
澤田くんはエレベーターのボタンを押すと前を向いたまま立っている。私もなんとな~く2人の後ろに立ち、エレベーターを待つ。
そしてエレベーターが到着し、『ポ~ン』と音をさせてドアが開いた。

「どうぞ」

澤田くんが彼女に先に乗るように促し、彼はその後に続いて乗った。
エレベータ内は2人以外は乗っていない。何となく私はその場に立ち尽くしてしまい、2人の足元をボーっと見てしまった。

「今井さん、乗らないのですか?」

澤田くんの声にハッとして彼を見ると、ボタンを押したまま不思議そうにこっちを見ている。ドアを開けたまま待っていてくれているのだ。

「あっ・・ごめんなさい」

急いでエレベーターに乗って、澤田くんと反対の左側に身を寄せて立つ。
そしてドアが閉まり、しばしの沈黙の後『ポ~ン』と音をさせ到着した。
そこは2階でドアが開くと目の前には誰もいなく、「先に降りて」と澤田くんが彼女に声をかけると「はい」と答えて先に彼女が降りた。そしてそれに続いて澤田くんが歩き、横にいる私に「今井さん、行ってらっしゃい」そう声をかけてエレベーターから降りていった。

「うん・・」

小さくて澤田くんには届かなかっただろう私の返事は、その後の静けさを誘った。
そのまま2人の後姿をボーっと眺めながら、『ポ~ン』と音をさせながら閉まっていくドアに胸がキューっと苦しさを感じた。

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