始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
自分のデスクに足早に向かいながら、胸から顔へと熱が上がっていくのを感じる。早い鼓動に合わせるかのように、まばたきも早くなる。
そして自分のデスクのパソコンを立ち上げて報告書の作成と思っても、すぐに手は止まり視線もパソコンからゆっくりとそれていく。無意識に休憩スペースで待っていると言う隼人の姿が頭に浮かんでしまって、浅いため息まで出てしまう。

   -どうして急に誘って来るの?-

隼人に対しての自分の気持ちと隼人の甘い態度はうまく折り合うことができずに、咲季を混乱させてしまう。
気になって気になって仕方がないはずの隼人に誘われて本当は嬉しいはずなのに、素直になることができない。
ボーっと視点の定まらない視界と頭の中には、どうしても彼にとって先輩であるという今までの自分が邪魔をしていることや、あの夜から今日まで結構日にちが経ってしまっていることで、どうしていいのかもわからなくなってしまっていることがグルグルと巡る。

  -こんなはずじゃなかったんだけどな・・-

自分が自分らしくいられない。いくら考えてもいつものように、『どうしたらいいの?』と迷うだけで答えが出せない。頭に浮かぶのは自分をストップさせてしまう理由ばかり。

  -もう!知らない、私ばかり悩んでるんだもん。澤田くんもずっと待てばいいじゃない!ー

唇を尖らせて頭の中に浮かんだ隼人の顔に、心の中で叫んだ。
そしてわざとゆっくり仕事をして、待っていると余裕の笑顔で言う隼人をおもいっきり待たせてやりたい気持ちになった。
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