始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
エレベーターを待っている間も澤田くんの隣に立っているだけで何となくソワソワしてしまう。食事に行くことなんて同僚としてだったらよくあることなのに。
でもあんな風に甘い言葉で誘われたことで、咲季はどうしようもなく意識してしまっていたのだった。
エレベーターが到着してドアが開くと中には男女の社員が1人ずつそれぞれ両端に立っていた。ボタンパネルの前に立っていた女子社員は、隼人の姿を見た途端嬉しそうに頬を染めたのを咲季は見逃さなかった。
奥のスペースで隼人の隣に立ちながら落ち着かない気持ちで1階への到着を待っていると、隼人がほんの少し頭を寄せてきた。
「何食べたいですか?」
彼のささやくようで甘さを含んだ声に、女子社員が振り向いた。
ー何言い出すのよ!-
私は反射的に彼女を見てしまう。彼女は驚いた表情で澤田くんを見た後、キツさを交えて私へと視線を移してきた。
ー勘弁してよ・・ー
ひしひしと感じる彼女の嫉妬心から視線をそらして、私は正面を見たまま無表情を貫いた。
質問に答えない私に「ん?」と更に私の顔を覗き込んでくる澤田くんのことも無視して、ひたすら1階への到着を心の中で『早く!早く!』と願った。
そうしてエレベーターは『ポーン』とチャイムを鳴らして1階に到着し、ドアが開いたと共に男性社員・女子社員と順番に出た後、私も複雑な気持ちでエレベーターを降りる。澤田くんの存在など無視してズンズンと歩く。
早足で歩いてヒールが『カツカツ』と早いリズムで音をたてているのに、隣を歩く彼とは全く距離がひらかない。悔しくなって足を止め、真横にいる澤田くんに体を向けて顔を見上げると、私が何で怒っているのか分からないのか何なのか僅かに笑顔まで向けてくる。
でもあんな風に甘い言葉で誘われたことで、咲季はどうしようもなく意識してしまっていたのだった。
エレベーターが到着してドアが開くと中には男女の社員が1人ずつそれぞれ両端に立っていた。ボタンパネルの前に立っていた女子社員は、隼人の姿を見た途端嬉しそうに頬を染めたのを咲季は見逃さなかった。
奥のスペースで隼人の隣に立ちながら落ち着かない気持ちで1階への到着を待っていると、隼人がほんの少し頭を寄せてきた。
「何食べたいですか?」
彼のささやくようで甘さを含んだ声に、女子社員が振り向いた。
ー何言い出すのよ!-
私は反射的に彼女を見てしまう。彼女は驚いた表情で澤田くんを見た後、キツさを交えて私へと視線を移してきた。
ー勘弁してよ・・ー
ひしひしと感じる彼女の嫉妬心から視線をそらして、私は正面を見たまま無表情を貫いた。
質問に答えない私に「ん?」と更に私の顔を覗き込んでくる澤田くんのことも無視して、ひたすら1階への到着を心の中で『早く!早く!』と願った。
そうしてエレベーターは『ポーン』とチャイムを鳴らして1階に到着し、ドアが開いたと共に男性社員・女子社員と順番に出た後、私も複雑な気持ちでエレベーターを降りる。澤田くんの存在など無視してズンズンと歩く。
早足で歩いてヒールが『カツカツ』と早いリズムで音をたてているのに、隣を歩く彼とは全く距離がひらかない。悔しくなって足を止め、真横にいる澤田くんに体を向けて顔を見上げると、私が何で怒っているのか分からないのか何なのか僅かに笑顔まで向けてくる。