始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
「コースとアラカルトどっちがいいですか?」

同じようにメニューを見ている澤田くんにそう聞かれたので、「う~ん、どうしようかな~」と迷いながら答える。だってどれを見ても美味しそうなんだもの。
季節の野菜・魚介・和牛を使った創作料理みたいね。

「いろいろ食べられるようにコースにしますか?」

「うん!」

「じゃあドリンクも料理に合わせてもらいましょうか」

そう言うとすぐにオーダーを済ませてくれた。
そうしてまず食前酒と前菜が運ばれ、一口飲むと甘く優しい味が広がった。
その後に続いた海鮮焼きと3種の串焼きと白ワインも私を感動させた。

「本当に美味しい。いいお店知っているんだね。鉄板焼のお店?」

「和風鉄板焼きだから煮物とかもあって日本酒も揃ってますよ」

澤田くんの言う通り、料理の合間の箸休めのように小さな小鉢で煮物と和え物、そして小さなグラスで日本酒がテーブルに並んだ。

「ここのお店に結構来ているの?」

「ん~、接待で3回位来ました」

その答えに何となく邪推したくなってしまう。

「接待だけ?女の子と来ればいいのに。絶対喜ばれるよ」

「デートに取っておいたんですよ」

涼しい顔で言われたその言葉に、一瞬表情が止まってしまった。『デートに取っておいた』ってどういう意味?
焦りと迷う気持ちが混ざって、少し声がうわずってしまう。

「だったら・・私が先に来ちゃダメじゃない。ちゃんとデートの日まで取っておきなさいよ」

自分で言ってて寂しくなる。さっきまでの満たされた気持ちがサラサラと崩れていく。
でもそんな複雑な気持ちで言葉を投げかけた私に、予想外の言葉を返してきた。

「だから今日ここへ来たんですよ」

「・・え?」

言葉の意味を理解していない私に、彼は優しい笑みを見せた。
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