始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
「今日はデートだって思ってもらえますか?」

「・・・」

何でそんなこと言うのよ・・
私が思うデートと澤田くんのデートは意味が違うの?それでも澤田くんの言葉を良いように真っ直ぐとらえそうになって焦り、顔がどんどん熱くなる。

「デートなら・・いつも誘ってくれる女の子の中から選べばいいじゃない?」

ああ・・私の口から出るのは、いつも皮肉な言葉ばかり。
そして私の言葉に目の前の澤田くんの笑みもゆっくりと薄れていくのを見て、胸の鼓動も早くなる。

「澤田くんの周りには誘われるのを待っている人がいくらでもいるじゃない。それに社内じゃなくてもいるんでしょ。何回か会社のロビーで待ち伏せしていた子に声かけられて、澤田くんのこと聞かれたことだってあるんだから」

それは嘘でも何でもなくて、私が外回りから帰社した時にロビーでキョロキョロしている若い子に『営業部の澤田さんいらっしゃいますか?』と声をかけられたことがある。きっと待ち伏せをしていたのだろう。
それに澤田くんと組んで会社訪問していた頃、澤田くんが他社にアポイントがあって私一人で訪問した時に受付嬢から『あの・・今日は澤田さんはご一緒ではないのですか?』とお伺いされたこともある。
私が知っている限りでも何人か浮かぶのだから、実際はもっともっといるのだろうな・・。それを思うと何とも心に波が立つ。
私の言葉に何も返さない彼に、勝手だけれどモヤモヤしてくる。
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