始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
「いいよ、じゃあ今度ね」

サラッと言いながらも本当は胸が高鳴る。
これが幸せってものなのかな・・。
今までずっと自分の幸せについて考えることから逃げていた。
既婚者と付き合えば、我慢することは多かったから。
自分が正しくないことをしている意識はあったから、求めてはいけないということを常に頭においていた。本当は我慢することに苦しむことが多かったけど。それに慣れてしまっていたのは確かで、自分の感情を出すことがかえって難しくなってしまった。
だから澤田くんのストレートな表現に素直に答えることに戸惑ってしまう。可愛くないのも分かっているけど、今更私のキャラでもないし。
そう、あの日彼と寝てしまった日から私のペースはすっかり乱されてしまい、戸惑うことばかり。

私本当に大丈夫?
違う、澤田くんは私で大丈夫?だ。
私が彼女なんかでいいのかな。

彼を想う女子社員達が知ったら・・と想像したら急に寒気がしてきた。
フルフルと首を振り、頭に浮かんだことを懸命に祓う。
そんな私の顔を彼は覗き込んできた。

「どうしました?」

私を見る彼の綺麗な顔立ちに無性に腹が立ってくる。。
むぅ~っと眉間にシワを寄せると、その顔をまるで愛しいものを見るかのように微笑むからこっちの調子まで狂ってしまう。

本当にずるいなぁ・・。

こんな彼の彼女として胸を張れる自信なんてない。
だから・・つい弱気な提案をしてしまう。
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