始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
「バカじゃないの?」
タバコの煙をくゆらせながら隣の席で呆れ顔を見せる沙耶から視線をそらし、ビールのジョッキを傾けてグビグビと飲み進めた。
それでも刺さるように痛いその視線に負けて、ジョッキをテーブルに置いてため息をつく。
「分かってるよ・・ハイハイ、馬鹿なんです」
流し目で沙耶を睨むと「フンッ」と返されてしまった。
そんな風に紗耶が呆れるのは、私と澤田くんが付き合うことを会社では秘密にすることを私が提案した事について。
「なんで自ら付き合っていることを隠すかね~。いい男なんでしょ?もてるんでしょ?あんたの存在をアピールしといたっていいじゃない」
「・・・うん、そうだけどさ」
自分でも嫌になる位に口ごもってしまう。
沙耶の言いたいことはよく分かる。もし私が友達の恋愛相談を聞く側だったら、間違いなく沙耶と同じことを言うし。
でも今の私にはそれができない。
好きな人と付き合って浮き足立つような気持ちでいっぱいになるとか、胸がいっぱいで食事も喉を通らないとか。みんなの憧れている人と付き合って自慢したい気持ちと独占欲。
そんな感情は恋する気持ちなら当たり前なことなのに、それを躊躇してしまう気持ちが先立ってしまう。
それを察知しているのか呆れているのか、沙耶はカウンターに肘をつき手のひらに顎を乗せて私の顔を見続ける。そして僅かに笑った。
タバコの煙をくゆらせながら隣の席で呆れ顔を見せる沙耶から視線をそらし、ビールのジョッキを傾けてグビグビと飲み進めた。
それでも刺さるように痛いその視線に負けて、ジョッキをテーブルに置いてため息をつく。
「分かってるよ・・ハイハイ、馬鹿なんです」
流し目で沙耶を睨むと「フンッ」と返されてしまった。
そんな風に紗耶が呆れるのは、私と澤田くんが付き合うことを会社では秘密にすることを私が提案した事について。
「なんで自ら付き合っていることを隠すかね~。いい男なんでしょ?もてるんでしょ?あんたの存在をアピールしといたっていいじゃない」
「・・・うん、そうだけどさ」
自分でも嫌になる位に口ごもってしまう。
沙耶の言いたいことはよく分かる。もし私が友達の恋愛相談を聞く側だったら、間違いなく沙耶と同じことを言うし。
でも今の私にはそれができない。
好きな人と付き合って浮き足立つような気持ちでいっぱいになるとか、胸がいっぱいで食事も喉を通らないとか。みんなの憧れている人と付き合って自慢したい気持ちと独占欲。
そんな感情は恋する気持ちなら当たり前なことなのに、それを躊躇してしまう気持ちが先立ってしまう。
それを察知しているのか呆れているのか、沙耶はカウンターに肘をつき手のひらに顎を乗せて私の顔を見続ける。そして僅かに笑った。