ラストバージン
その夜、やっぱり見計らったように電話を掛けて来た母は、私が電話に出た直後から質問攻めだった。


『今日はどうだった?』から始まった質問は、一体いくつ紡がれただろう。
大体、母はこんなに過干渉な性格だっただろうか。


実家に住んでいた頃にはあまり干渉をされた記憶が無いのに、ここ数年の干渉具合には辟易してしまう。
それだけ心配してくれているのだろうけれど、心配もここまでになるとお節介以外の何物でもない。


『それで、どうなの? 佐原さんとはいいお付き合いが出来そう?』


ベッドに横になってげんなりとしている私の様子なんて知る由もない母からの質問は、このままだとまだまだ終わりそうにない。
やっぱり母にはきちんと話す必要があると判断し、今まで投げやりだった態度を改めるように体を起こしてベッドに腰掛けた。


「ねぇ、お母さん」

『何? 佐原さんとお付き合いする気になった?』

「心配してくれているのはわかるんだけど、あんまり期待しないで……。正直、佐原さんとは一度しか会うつもりがなかったのにズルズル会う事になっていて、ちょっと困ってるの……」


出来る限り母の機嫌を損ねないように言葉を選び、神妙な声音で素直な気持ちを告げた。

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