ラストバージン
（次に会う時は、本当に結婚の報告だったりして……）


【近々、ランチでもどう？】


菜摘から着たばかりのLINEを読んで、思わず感じた事を声に出してしまいそうになった。
その文面だけでは彼女の真意は読み取れないものの、つい色々と勘繰ってしまう。


もし、菜摘から結婚の報告を受けたら、私はきちんと笑顔で祝福出来るのだろうか。
いくら自分の人生が停滞しているからと言って、友達の幸せを喜べないような人間にはなりたくない。


【ごめん、しばらく忙しいの】
【また連絡するね】


ただ、どちらにしても今は彼女と会う余裕はないから、コメント欄を二つに分けて文章を端的に打ち、ぼんやりと窓の外を眺めた。


とっくに帰宅ラッシュを過ぎた今も、目の前の歩道は人が多い。
その慌ただしい光景と緊張した心のせいで気が休まらず、窓際のテーブルはとても居心地が悪かった。


そんな私を更に追い詰めるように佐原さんが店内に入って来たのは、私がこのお店に着いてから十五分が過ぎた頃の事。


「結木さん、お待たせしてすみません」


私に気付いて嬉しそうに歩いて来た彼に笑顔を向けながら、憂鬱塗れの心が罪悪感に刺激された。

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