ラストバージン
「佐原さんはいつも気を遣って下さっていたのに、私はいつだって不誠実でした……。本当に申し訳ありません」
向かい合う佐原さんの瞳を真っ直ぐ見つめた後で、頭を出来るだけ深く下げて目を閉じた。
「やめて下さい、結木さん」
すぐに声で制した彼は、手を伸ばして私の肩を軽く押しながら「頭を上げて下さい」と言った。
ゆっくりと顔を上げ、再び正面を見つめる。
「結木さんがあまり乗り気じゃない事は、最初から何となくわかっていましたから。正直に言うと、僕もあまり乗り気じゃなかったんです」
「え?」
「だからこそ、結木さんの気持ちに気付いたのかもしれませんね」
佐原さんが私と同じ気持ちだった事に驚いて目を小さく見開くと、彼は悩ましげな微苦笑を零した。
「ただ、僕は初めてお会いした時に結木さんの仕事に真摯なところに好感を持ちましたから、すぐに気持ちは変わったんですが……。どうやら、結木さんの心を動かすのは無理なようですね……」
自嘲気味に微笑む佐原さんの表情に、どうしてもっと早く誠実になれなかったのだろうと悔やむ。
彼との恋愛や結婚を考えられないのなら、やっぱり少しでも早くきちんと断るべきだったのだ。
向かい合う佐原さんの瞳を真っ直ぐ見つめた後で、頭を出来るだけ深く下げて目を閉じた。
「やめて下さい、結木さん」
すぐに声で制した彼は、手を伸ばして私の肩を軽く押しながら「頭を上げて下さい」と言った。
ゆっくりと顔を上げ、再び正面を見つめる。
「結木さんがあまり乗り気じゃない事は、最初から何となくわかっていましたから。正直に言うと、僕もあまり乗り気じゃなかったんです」
「え?」
「だからこそ、結木さんの気持ちに気付いたのかもしれませんね」
佐原さんが私と同じ気持ちだった事に驚いて目を小さく見開くと、彼は悩ましげな微苦笑を零した。
「ただ、僕は初めてお会いした時に結木さんの仕事に真摯なところに好感を持ちましたから、すぐに気持ちは変わったんですが……。どうやら、結木さんの心を動かすのは無理なようですね……」
自嘲気味に微笑む佐原さんの表情に、どうしてもっと早く誠実になれなかったのだろうと悔やむ。
彼との恋愛や結婚を考えられないのなら、やっぱり少しでも早くきちんと断るべきだったのだ。