ラストバージン
とても嬉しかった。


お世辞だとしても、自分の姿勢を認めて貰えた事に心が喜びを感じて……。

「そんな事……」

すぐに謙遜の言葉を返せなかった程に舞い上がって、自然と笑みが零れていた。


「自分がそうしようと思っているだけですから……」

「それがすごいんですよ。だって、ラクしたいと思う気持ちって、多かれ少なかれ誰だって持っていると思うんです」

「確かに……」


人間だからこそ疲れてしまうのは当たり前で、避けられない事を前にしてラクをしたくなったり休みたいと思う時は、誰にだってあるだろう。


「でも、〝後輩達に質問をされた時に答えられないような先輩にならない為〟には、周りよりも何倍もの努力が必要だと思いますし、それは生半可な気持ちじゃ出来ない事です。もちろん、スキルアップの事だって」


榛名さんは、少しだけ興奮気味に話していた自分を落ち着かせるように、息を吐いてからカップに口を付けた。


「それでも、そういう姿勢でいる為に努力をされている結木さんは、本当に素晴らしいと思います」


私の瞳を真っ直ぐ見つめた彼から、目が逸らせなくなりそうだったけれど……。平然を装いながら私もブレンドを一口飲み、微笑みを繕った。

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