ラストバージン
「あ、そういえば……」
ポツリと切り出した榛名さんに小首を傾げると、彼はどこか寂しげにも見える微笑みを浮かべた。
「最近、お忙しいんですか?」
「え?」
「楓でちっともお見掛けしないのでマスターに訊いてみたら、しばらく行かれていないみたいでしたから」
怪訝な顔をした私を、榛名さんが微苦笑のまま見つめた。
きっと、変な意味じゃない。
ただ何となく気になって、そんな事を尋ねただけに違いない。
頭の中ではそう言い聞かせながらも、心はやけに騒ぎ出していた。
「し、新年度で、ちょっと忙しくて……。早番や日勤の時は残業ばかりで……。楓には行きたいんですけど、不規則な勤務なので中々時間が取れなくて……」
必死に平静を装おうとしても口調はしどろもどろで、動揺を上手く隠せているのかと不安になる。
「どうりでお会い出来ないはずですね」
榛名さんはそんな私の心情を余所に笑い、小さなため息をついた。
「あれから見掛けないので、どうされているのかと気になっていたんです。楓でも、通勤や帰りの時でも、結木さんに会えないかなぁと思っていたんですけど……。残念ながら、一向に会えませんでしたから」
ポツリと切り出した榛名さんに小首を傾げると、彼はどこか寂しげにも見える微笑みを浮かべた。
「最近、お忙しいんですか?」
「え?」
「楓でちっともお見掛けしないのでマスターに訊いてみたら、しばらく行かれていないみたいでしたから」
怪訝な顔をした私を、榛名さんが微苦笑のまま見つめた。
きっと、変な意味じゃない。
ただ何となく気になって、そんな事を尋ねただけに違いない。
頭の中ではそう言い聞かせながらも、心はやけに騒ぎ出していた。
「し、新年度で、ちょっと忙しくて……。早番や日勤の時は残業ばかりで……。楓には行きたいんですけど、不規則な勤務なので中々時間が取れなくて……」
必死に平静を装おうとしても口調はしどろもどろで、動揺を上手く隠せているのかと不安になる。
「どうりでお会い出来ないはずですね」
榛名さんはそんな私の心情を余所に笑い、小さなため息をついた。
「あれから見掛けないので、どうされているのかと気になっていたんです。楓でも、通勤や帰りの時でも、結木さんに会えないかなぁと思っていたんですけど……。残念ながら、一向に会えませんでしたから」