ラストバージン
指導看護師を選ぶのは、どの病棟でも看護主任と決められている。


「本当に大丈夫なの?」


だけど、何かあれば師長の責任になるから、色々と懸念しているのだろう。
矢田さんがいない時のナースステーションは彼女への不満が飛び交っている事が多いし、師長に直談判しているスタッフがいてもおかしくはない。


「確かに不安はたくさんありますが、まだ入って二週間程ですし……。酒井さんとも連携を取って、私も出来る限りフォローを入れるつもりですから」

「フォローって言ったって、矢田さん実習生よりも酷いミスを連発しているんでしょう? 早いとこ、指導看護師を変えた方がいいんじゃないの? あなたが受け持ったって構わないのよ?」


次々と質問を投げ掛けて来る師長に、ため息を漏らしてしまいそうになったけれど……。

「もちろん、それも視野に入れています。ただ、もう少しだけ酒井さんに任せてみたいんです」

それをグッと堪え、真剣な表情のまま続けた。


「師長にもご迷惑をお掛けする事もあると思いますが、このままもう少し様子を見て頂けませんか?」


最後に笑顔を見せた私に、師長は相変わらず不満そうなままだったけれど、それ以上は何も言わなかった。

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