ラストバージン
「姉とは四歳離れているんですけど、何故か昔から私の方がしっかりしていて……。姉がおっとりしているからなのかもしれませんけど、親戚からは『性格だけなら姉と妹が逆なんじゃないか』なんてよく言われました」

「結木さんって、昔からしっかりされていたんですね」

「きっと、可愛いげがない子どもだったと思います」


冗談半分で告げた言葉は、ずっと心のどこかで引っ掛かっていた事。


新年や法事なんかで祖父母の家に親戚が集まった時には、大人達だけが飲んでいる部屋の前をこっそり通ると、親戚から『茜は素直で可愛げがあるけど葵は……』なんて言われていたのを知っている。
その度に子ども心に傷付いたけれど、いつも気付かない振りをしていた。


「そんな事ない」


昔の事を思い出して胸の奥がチクリと痛むさなか、榛名さんがきっぱりと言い放った。


「ご両親はきっと、あなたの事は安心して見守る事が出来たと思いますよ」

「そんな風に言われたのは初めてです」

「さっきと逆ですね」

「そうですね」


大した事じゃなかったけれど、榛名さんの言葉に小さな痛みは癒されて笑顔が零れ、同時に子どもの頃の私まで救われたような気がした。

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