ラストバージン
「それは楽しみですね。甥っ子さんは何歳ですか?」

「六歳で、この春から小学生になりました」

「じゃあ、これからが楽しみですね。今はまだボールを追うだけでしょうが、数年すれば迫力が出て来ますよ」

「それ、姉が電話で言っていました。『ボールに群がってるだけなのよ』って。でも、本人はすごく頑張っているみたいで、最近はボールを離さないそうなんです」

「将来、有望かもしれませんね。うちの高校に来てくれないかなぁ」


「気が早いですよ」なんて返しながらも、そんな事になれば楽しいんじゃないかと笑みが落ちる。


「まだ試合はないそうなんですけど、メッセージで催促されているので試合の時は応援に行こうと思っています」

「メッセージ?」

「甥っ子とやり取りしているんです」

「今時の小学生はすごいですね。この間までは幼稚園に通っていたんでしょう? 僕が子どもの頃なんて、鼻水垂らしながら遊んでいましたよ」

「全部平仮名なんですけどね。姉の携帯からメッセージが来るんです」


驚きを表情に出した榛名さんの言葉に吹き出し、信号待ちでスマホを取り出して孝太からの平仮名だらけのメールを見せると、彼は「可愛いですね」と微笑んだ。

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