ラストバージン
行き先どころか、何も決めていない。
いつもならそんなドライブを非効率的だと感じていたかもしれないけれど、今はこんな時間をとても素敵だと思える。


話が尽きる事はないし、たまに沈黙になっても変な気まずさを感じる事もない。
婚活やお見合いをした時は沈黙が嫌で、居心地が悪くて仕方なかったのに、榛名さんとならそんな時間すらもホッと出来た。


「あ、この曲……」


ラジオ派だという榛名さんと他愛のない話で盛り上がっていると、スピーカーから流れて来た曲に懐かしさを感じて笑みが零れた。


「本当だ、懐かしいな」


同じように微笑んだ彼が、少しだけボリュームを上げる。


「高校生の頃だったかな、流行ったの」

「うん、たぶん。修学旅行の時に聴いた記憶があるから、高二の頃かもしれないな」

「じゃあ、もう十三年くらい前の曲になるんだね」


敬語だった言葉遣いも次第にいい意味で砕けていって、すっかりタメ口になっている。


「そういえば、修学旅行はどこだった? 僕は北海道だったんだけど」


高校の修学旅行で沖縄に行った時の事を話すと、榛名さんも北海道での事を色々と語ってくれ、そのままお互いの学生時代の思い出話で会話が弾んだ。

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