ラストバージン
楓には駐車場がないからと、榛名さんのマンションの駐車場に車を置いてから徒歩で来たけれど……。
「あ……」
ドアに掛けられたプレートは、【臨時休業】の四文字を主張していた。
【営業中】と【本日休業】の他にある、【臨時休業】のプレート。
【本日休業】と同じくらいの出番があるであろうそれに、私達は顔を見合わせて苦笑を漏らした。
「残念……。マスターのブレンドが飲みたかったんだけどなぁ」
「私も。榛名さんがコーヒーの話なんてするから、口の中がすっかりマスターのブレンドの気分になっちゃったじゃない」
「僕のせいじゃなくて、気まぐれなマスターのせいだろ」
苦笑いのままの榛名さんも、コーヒーが恋しいらしい。
「どうする? どこか違うお店に行く?」
「仕方ないな。安くてすぐに提供してくれる店で、我慢するかな」
榛名さんを見上げると、彼は落胆混じりの微笑みで答えた。
「じゃあ、ココアにするの?」
「今日は絶対にコーヒー。今はそれ以外は受け付けそうにないんだ」
意外と頑固な一面を見せる榛名さんに、思わずクスクスと笑ってしまう。
彼は片方の眉をピクリと上げたけれど、すぐに小さなため息をついた後で柔らかい笑顔を見せた。
「あ……」
ドアに掛けられたプレートは、【臨時休業】の四文字を主張していた。
【営業中】と【本日休業】の他にある、【臨時休業】のプレート。
【本日休業】と同じくらいの出番があるであろうそれに、私達は顔を見合わせて苦笑を漏らした。
「残念……。マスターのブレンドが飲みたかったんだけどなぁ」
「私も。榛名さんがコーヒーの話なんてするから、口の中がすっかりマスターのブレンドの気分になっちゃったじゃない」
「僕のせいじゃなくて、気まぐれなマスターのせいだろ」
苦笑いのままの榛名さんも、コーヒーが恋しいらしい。
「どうする? どこか違うお店に行く?」
「仕方ないな。安くてすぐに提供してくれる店で、我慢するかな」
榛名さんを見上げると、彼は落胆混じりの微笑みで答えた。
「じゃあ、ココアにするの?」
「今日は絶対にコーヒー。今はそれ以外は受け付けそうにないんだ」
意外と頑固な一面を見せる榛名さんに、思わずクスクスと笑ってしまう。
彼は片方の眉をピクリと上げたけれど、すぐに小さなため息をついた後で柔らかい笑顔を見せた。