ラストバージン
個室とまではいかないものの、テーブルごとに大きな仕切りのある大衆居酒屋の一角。
周囲の声は聞こえるけれど、仕切りのおかげで視線を気にせずに済むところがここを選んだ理由だった。
本当は職場から距離があるお店に行きたかったけれど、私と二人でタクシーや電車で移動をするのは矢田さんには酷だろうと思い、だったらせめて同僚達と鉢合わせする可能性が低い場所にしようと考えたのだ。
「遠慮しないで、好きな物を頼んでね。今日はご馳走するから」
私の言葉に怪訝そうにしながらも頷いた矢田さんは、遠慮からか中々メニューを決める事が出来なくて、一先ずドリンクだけを選ばせた。
料理を適当に頼んだ私は、店員がビールとレモンサワーを持って来るまでは他愛のない話を振った。
「とりあえず乾杯しようね」
「あ、はい……」
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
私に促されてサワーのグラスを持った矢田さんと乾杯をし、彼女の視線を感じながら豪快にジョッキを煽る。
すると、矢田さんは意外だと言わんばかりに目を小さく見開き、ようやくグラスに口を付けた。
その様子を見て、私に誘われた理由がわからないであろう彼女の緊張が、ほんの少しだけ解れたのを感じ取った。
周囲の声は聞こえるけれど、仕切りのおかげで視線を気にせずに済むところがここを選んだ理由だった。
本当は職場から距離があるお店に行きたかったけれど、私と二人でタクシーや電車で移動をするのは矢田さんには酷だろうと思い、だったらせめて同僚達と鉢合わせする可能性が低い場所にしようと考えたのだ。
「遠慮しないで、好きな物を頼んでね。今日はご馳走するから」
私の言葉に怪訝そうにしながらも頷いた矢田さんは、遠慮からか中々メニューを決める事が出来なくて、一先ずドリンクだけを選ばせた。
料理を適当に頼んだ私は、店員がビールとレモンサワーを持って来るまでは他愛のない話を振った。
「とりあえず乾杯しようね」
「あ、はい……」
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
私に促されてサワーのグラスを持った矢田さんと乾杯をし、彼女の視線を感じながら豪快にジョッキを煽る。
すると、矢田さんは意外だと言わんばかりに目を小さく見開き、ようやくグラスに口を付けた。
その様子を見て、私に誘われた理由がわからないであろう彼女の緊張が、ほんの少しだけ解れたのを感じ取った。