ラストバージン
Count,02 虚無感に蓋
一昔前には〝花金〟なんて言われていた、週末の夜。
だけど、曜日なんて関係なく忙しい現代人の例に漏れない私は、明日も仕事で全く浮かれられない。


そんな状況の中、目の前では高校時代からの友達の澤田菜摘(さわだなつみ)が声を上げて笑っていた。


「……ちょっと、菜摘。笑い事じゃないんだけど」

「ごめん、ごめん」


ため息混じりに菜摘を睨めば、彼女は軽い口調で謝罪を紡いだ。


「いやぁ、おばさんらしいと言うか、なんと言うか……。喧嘩した後であっけらかんとお見合いを勧める感じ、好きだわぁ」

「もう、他人事だと思って」

「心配してくれるだけいいじゃない。まぁ、しつこく言われるのはストレスになるだろうけど、うちの親なんて私には無関心なんだから」

「でも、菜摘はまだ結婚を考えてないんでしょ?」

「私はいつも言ってるように、そんなに結婚願望がないだけよ。うちの親、仲悪かったじゃない? 私が成人したのをキッカケに離婚した後、二人ともさっさと再婚しちゃったくせに、母親はまたすぐに離婚したし……。ずっとそういうのを見て来たから、いまいち結婚願望が湧かないの」


あっけらかんと言った菜摘は、デザートのモンブランを口に運んだ。

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