ラストバージン
「私ね、ちょっと真面目な出会いを探してみようかと思ってるんだ」

「え？」


予想外の言葉に目を見開くと、菜摘は微苦笑を零した。


「確かに、今の私には結婚願望はほとんどないよ」


あくまでも、まだ結婚願望は無いと言う彼女。


だけど……。

「でも、『五年後も十年後も同じ気持ちなのか』って訊かれたら、頷く事は出来ないから」

表情は至って真剣で、菜摘の中で大きな心境の変化があった事を感じ取れる。


「この歳になると既婚者はもちろん、子持ちの友達に囲まれるじゃない？　そういう子達を見てるとさ、もしこのままずっと独身だったら自分はいつか一人で死んでいくのかな、とか考えちゃって……。出産の事を考えたら、あんまり猶予もないしさ」


それは、とてもよくわかる。
結婚には前向きになれなくても、ふと将来の自分の生き方や出産について考えた時、いつだって抱くのはそういったどうしようもない不安ばかりだから……。


「そういう事を何度も考えているうちに、そろそろちゃんと結婚を考えるべきなのかも、とか思っちゃってさ。とりあえず、今度は自分の意思で婚活パーティーに参加してみようと思って、昨日申し込んでみたんだ」


菜摘は、少しだけ明るくなった顔で笑った。

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