ラストバージン
「ところで、このまま真っ直ぐでいいの?」

「うん。突き当たりを右折したら、もう見えるよ」


深呼吸を繰り返し、受験の時に抱いた緊張よりも数倍は大きな感覚を押さえ込む。


ウィンカーを右に出した榛名さんがハンドルを切り、とうとう実家が見えた瞬間。

「……あれ?」

数軒先の一軒家の前に、桃子と孝太が立っていた。


「桃子と孝太……」

「もしかして、姪っ子さん達?」

「あ、うん」


私が頷いた直後、こちらに気付いた桃子と孝太がパァッと笑顔になった。


「葵ちゃーんっ!」


両手を大きく振る二人に、私は戸惑いながらも手を振り返す。


「家の前に停めても大丈夫?」

「うん、この辺りはわりと広いから」


門扉の中に入った桃子と孝太は、運転する榛名さんを不思議そうに見つめている。
エンジンが止まったのを確認してからドアを開けると、二人は待ってましたと言わんばかりに飛び付いて来た。


「葵ちゃん!」

「桃子、孝太、久しぶり。元気だった?」

「うん!」

「ねぇ、今日はどうしてここにいるの?」


元気良く頷いた桃子と孝太よりも早くに先手を打つと、二人はお互いに競い合うように口を開いた。

< 295 / 318 >

この作品をシェア

pagetop