ラストバージン
「葵ちゃんとお友達が来たよー!」


前を歩く孝太が玄関のドアを開け、それはそれは家中に響くような声で報告してくれた。


「はーい、いらっしゃ……」


すぐにキッチンから出て来た母は、私達を見て目を小さく見開いた。


「え? あれ? ……あなた、菜摘ちゃんと来るんじゃなかったの?」


相手が菜摘だとは言っていないけれど、母は友達と聞いて長い付き合いの彼女を想像していたのだろう。
彼女じゃなかった事は元より、どこからどう見ても男性にしか見えない榛名さんを見て呆然としていた。


「初めまして」

「あ、は、はい……」

「葵さんとお付き合いをさせて頂いています、榛名拓海と申します。本日は突然お邪魔してしまい、申し訳ありません」

「いえ……。……えぇっ!? お付き合いっ!?」


さっきよりも目を丸くした母は、絶叫にも似た声音を上げた。


「はい。本日はご挨拶をさせて頂きたくて、お伺い致しました」

「おっ、おっ……お父さーんっ!」

「ちょっと、お母さん!」


とうとうパニックになった母は、オロオロとしたかと思うと絶叫した。


「何事だ?」


その声に驚いたような顔の父と姉、そして孝輔さんまでが出て来た。

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