ラストバージン
その後すぐに、スタッフから「好印象だった方やカップルになりたいと思った方の番号を記入して下さい」と、第三希望まで記入欄のある用紙を渡されたけれど……。

「ちょっと、葵! 誰でもいいから、とにかく番号を書きなさいよ!」

菜摘に叱られても、一つも埋める事のないまま用紙を提出した。


「さっきの人といい感じだったんじゃないの? あの人、確か弁護士だったでしょ?」


どうしてそんな事を覚えているのかと目を小さく見開くと、彼女が「医者と弁護士は印象に残り易いでしょ」と当然のように言った。


「弁護士でも別に……。確かに話す分には楽しかったけど、また会いたいって気持ちもないし……」

「勿体ないわね、もう」

「いいのよ、私は」

「でも、連絡先は交換したんでしょ? 一度くらい食事に行きなさいよ」


目敏い菜摘にため息を飲み込み、曖昧な微苦笑を返す。


それから程なくして、カップル成立した参加者達の番号が順番に読み上げられていき、彼女もさっきまで話していた男性と見事に成立していた。
あれだけ女性に囲まれていた高田さんはカップル成立はしていなかったけれど、帰り際に目が合った彼は意味深な笑みを浮かべていた――。

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