ラストバージン
クリスマスも年末も当たり前に仕事だった私は、元日の夜からの夜勤を終えて実家に来ていた。
自宅から一時間も掛からない距離とは言え、また母から色々と言われるのだと思うと億劫で、仕事を理由に断ろうとも考えたのだけれど……。
『お正月くらい帰って来なさいよ。お父さんも、葵に会えるのを楽しみにしているんだから』
年末に掛かって来た母からの電話で、やっぱり新年の挨拶くらいはきちんとしておこうと決めたのだった。
母が帰省に対して釘を刺した理由は、〝あの約束〟の期限がこの時期だからというのはよくわかっているし、どんな風に切り出されるのかと考えるとすぐにでも帰りたい。
だけど……。
「ねぇねぇ、葵ちゃん! 今日、じーじの家にお泊まりしようよ! ぼくとお姉ちゃん、お泊まりするんだよ!」
こうも可愛らしい笑顔を向けられると、考えて来た言い訳をことごとく飲み込んでしまう。
「ごめんね、私はお仕事があるから無理なのよ」
「えぇ〜! お正月なのにお休みじゃないの?」
「なぁんだ、つまんないの。葵ちゃんといっぱいお話したかったのになぁ……」
不満げな孝太と同じような顔を見せた桃子に、もう一度「ごめんね」と謝った後でバッグから二つのお年玉袋を取り出した。
自宅から一時間も掛からない距離とは言え、また母から色々と言われるのだと思うと億劫で、仕事を理由に断ろうとも考えたのだけれど……。
『お正月くらい帰って来なさいよ。お父さんも、葵に会えるのを楽しみにしているんだから』
年末に掛かって来た母からの電話で、やっぱり新年の挨拶くらいはきちんとしておこうと決めたのだった。
母が帰省に対して釘を刺した理由は、〝あの約束〟の期限がこの時期だからというのはよくわかっているし、どんな風に切り出されるのかと考えるとすぐにでも帰りたい。
だけど……。
「ねぇねぇ、葵ちゃん! 今日、じーじの家にお泊まりしようよ! ぼくとお姉ちゃん、お泊まりするんだよ!」
こうも可愛らしい笑顔を向けられると、考えて来た言い訳をことごとく飲み込んでしまう。
「ごめんね、私はお仕事があるから無理なのよ」
「えぇ〜! お正月なのにお休みじゃないの?」
「なぁんだ、つまんないの。葵ちゃんといっぱいお話したかったのになぁ……」
不満げな孝太と同じような顔を見せた桃子に、もう一度「ごめんね」と謝った後でバッグから二つのお年玉袋を取り出した。