ラストバージン
昼食を済ませて和気藹々と過ごしていると、不意に父が立ち上がって居間から出て行った。
少ししてから居間を出ると、トイレに行っていたらしい父と廊下で鉢合わせた。
「何だ、葵か。どうした?」
「お父さん」
「ん?」
「これ、少ないけど……。お母さんと美味しい物でも食べて来て」
大人向けのお年玉袋を差し出すと、父がほんの少しだけ困ったように笑った。
「いいよ、そんなの……。葵が欲しい物でも買いなさい」
「ううん。本当に少しだから、受け取ってよ」
「悪いな……。ありがとう」
眉を下げながらも嬉しそうにしてくれた父は、受け取ったお年玉袋を自室に持って行くと言い、二階に上がった。
その様子に笑みを零し、今度はキッチンへと向かう。
「何か手伝おうか?」
案の定、一人で洗い物を片付けていた母に声を掛けると、母は首を横に振った。
「もう終わるから大丈夫よ。夜勤明けなんだから、ゆっくりしてなさい」
「うん、ありがとう。あのさ、お母さん」
「何?」
「これ、少しだけど……。お父さんと美味しい物でも食べに行ってね」
父の時と同じ言葉を紡ぎ、母のエプロンのポケットにお年玉袋を入れた。
少ししてから居間を出ると、トイレに行っていたらしい父と廊下で鉢合わせた。
「何だ、葵か。どうした?」
「お父さん」
「ん?」
「これ、少ないけど……。お母さんと美味しい物でも食べて来て」
大人向けのお年玉袋を差し出すと、父がほんの少しだけ困ったように笑った。
「いいよ、そんなの……。葵が欲しい物でも買いなさい」
「ううん。本当に少しだから、受け取ってよ」
「悪いな……。ありがとう」
眉を下げながらも嬉しそうにしてくれた父は、受け取ったお年玉袋を自室に持って行くと言い、二階に上がった。
その様子に笑みを零し、今度はキッチンへと向かう。
「何か手伝おうか?」
案の定、一人で洗い物を片付けていた母に声を掛けると、母は首を横に振った。
「もう終わるから大丈夫よ。夜勤明けなんだから、ゆっくりしてなさい」
「うん、ありがとう。あのさ、お母さん」
「何?」
「これ、少しだけど……。お父さんと美味しい物でも食べに行ってね」
父の時と同じ言葉を紡ぎ、母のエプロンのポケットにお年玉袋を入れた。