チャラ男とちょうちょ
それから、あいつから連絡が来ることは一度もなかった。


(運命だとかなんとか言ってたくせに…)


最初はそう思ったけど、仕事が忙しくてそんなことを考える暇なんて微塵もなかった。


看板にするからと言われて撮影したものが本当に看板になってkissが入っているビルの一番上に掲げられたのは、そんな時期だった。
うちのボーイたちは遠目からそのビルを写メったりして、その日はちょっとした祭りみたいになった。
店長も、例外ではなかった。

「ほら、良く撮れてるよな」

携帯を見せてくる店長は、何だかちょっと誇らしげにも見える。
確かに良く撮れてるとは思う。
写メに写るあたしは、あたしなんだけど、あたしじゃないような気がして他人のそれを見るように眺めた。


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