チャラ男とちょうちょ
最後のお客様を店の外まで見送って、うーんと背伸びをした。
そういえば、清水裕貴はzeroの系列店でボーイをしてるって言ってた。
だから、毎日ここにいるわけじゃない。
ふとそんなことが頭をよぎった。

そんな時だった。
道路を横切って誰かがあたしに近づいてきた。


「看板、すげーな!」


清水裕貴だった。

「すごい、のかな?」

あたしがそう答えると、

「初めて普通にしゃべってくれた」

と、清水裕貴は笑った。
振り返ってみれば、あたしは彼にいつもそっけなかった。
というか、何で今普通に答えてしまったのか自分でもわからない。

「リオナさん、風邪ひきますよ」

一緒にお見送りに出たボーイに言われる。

「戻りな!…お疲れ!」

あたしはまたね、と言うとビルの中に戻った。

< 12 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop