チャラ男とちょうちょ
それとは逆に、あたしがあげた小さな袋を大事そうにテーブルにそっと置いた。
裕貴は、ゲームの電源を消した。
外は、まだ夜明け前でうっすら明るいだけだった。

だんだん裕貴の顔が近づいてきて、あたしたちは初めてキスをした。
別にファーストキスでもないのに心臓が飛び出るんじゃないかと思った。


「初めてデートした日に、手出すのは何か大事にしてないような気がして、しなかったんだよね」


と裕貴は言った。
意外過ぎる。
そんな事考えるようには思えない。
だって、初めて出会った時、あたしを愛咲リオナだって言うような男だから。

今振り返ってみれば、女の子の扱いが上手い裕貴のことだから、どんな言葉をかけたら女の子がときめくのかわかってたのかもしれない。

だけど、しばらく恋愛とは無縁だったあたしはまんまと裕貴の思惑にハマってしまったのだった。

今度は深くキスをされ、あたしもそれを受け入れた。

「待って!…あたし、本当にずっとしてないからヤバイかも」

「大丈夫。絶対優しくするから」

裕貴がそう言うから、あたしは裕貴に身体を任せた。



「真奈美って、エッチのときかわいい声出すね♪」

あたしを抱きしめながら裕貴は言った。

「やめてよっ!」

あたしの頬が熱くなる。

「真奈美の客も知らない真奈美を、オレは知ってるんだーって思うとなんか優越感」

「何言ってんの」

なんて話しているうちに、だんだん眠気が襲ってきた。
裕貴の心臓の音が心地よくて、余計にそれを加速させた。

久しぶりに、普通の女の子としてのバレンタインを過ごした。
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