チャラ男とちょうちょ
裕貴のアラームの音で目が覚める。
あたしたちは爆睡していたようだ。

「じゃ、あたし行くね」

もうお別れの時間。
いつもなら裕貴が送ってくれるんだけど、なぜかあたしは一人で帰ろうと思った。

「なんで?送ってくのに」

「ギリギリまで寝ちゃったし、裕貴遅刻しちゃうよ?」

「ちょっとぐらい遅刻したって大丈夫だよ」

「ダメダメ!お仕事はちゃんとしてください!…じゃーね」

あたしはそう言って階段を下りた。
お邪魔しました、と言ってドアを開けると

「電話するから!」

と窓から顔を出した裕貴が大声で言った。
あたしはニコッと笑って手を振った。
なんだか、心がチクチクする。

大きな通りでタクシーを拾って乗り込んだとき、携帯が鳴った。
< 45 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop