チャラ男とちょうちょ
「似合ってる。でも、ドレスとはあわなかったかな?」

と、青葉さんは頭をかいた。

「ドレス着ててもつけるよ」

「ありがとう」

青葉さんは笑ってた。
裕貴の方をちらりと見ると、ヘルプについている子と話す訳でもなくずっと黙って飲んでいた。

「なーんか、青葉だけいい思いしてて気にくわねーな!リオナちゃん、何飲みたい?」

これは、社長の合図。
もう流れでなんとなくわかっていた。

「んー。モエシャンかな?」

「OKOK!店長出して!」

そう社長が言うと、店長はモエシャンのマグナムボトルを持ってくる。
あたしはもう何回も見たから見慣れたけど、初めてみるキャストは目を丸くした。
黒川社長は、目立つのが大好き。
驚くキャストの顔を見て満足そうだった。
あたしは、これをピーチネクターで割るのが好きだ。

「リオナちゃんはピーチネクターで割るんだよな?」

と言って、ピーチネクターをボーイに持ってこさせた。
全部、あたしが上げた売上になる。

「リオナさんはいいな!言わなくても客が勝手にいろいろ頼んでくれて」

キャストのひとりに言われた。
それを聞いた青葉さんが、

「リオナちゃんは気が利くんだよ。メールだって電話だって、遅れても絶対返してくれる。体調が悪そうなら無理に飲ませないし、飲み過ぎてたら止めてくれる。売上を気にして、それにとらわれてるうちはこうはならないよ!リオナちゃんだってなんにもしないでここまできたわけじゃないんだから」

と言った。
ちゃんと、あたしを評価して認めてくれるお客様がいる。
こんなにうれしいことはない。
だから、この仕事ってやめられないんだ。

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